1.改正ポイント
2.離婚時・財産開示の注意点
3.まとめ

現在日本国内での年間の離婚者数は208,333組
ここ近年の離婚者数の増減を見てもピーク時よりは減少しましたがそれでも数十年前と比較すれば高い比率となっています。

厚生労働省平成30年人口動態統計

そんな中、養育費の取り決めを行い離婚したにもかかわらず、支払われていない家庭が多く存在します。
離婚をする前にしっかりと養育費の取り決めをしているのは約43%、そのうち実際に養育費を受け取っている世帯は調査時点で約53%となっており、これは離婚した全家庭の約22%ということになります。

改正前の民事執行法では預貯金や給与を差し押さえるためには、相手の口座の金融機関名や支店名、勤務先などを自身で調べる必要がありました。
離婚した直後は分かる情報でも、不仲になり別れた元配偶者のそのような情報を得ることは通常難しいと思います。

このような事態を踏まえ、政府は相手方(親権等を有しない親)の財産の差し押さえがしやすくなる改正民事執行法を2019年5月に成立させました。
施行は2020年4月となっており、今まで「逃げ得」とされてしまっていた現状をどうにか打破する考えです。

1.改正ポイント

(1) 刑事罰の新設

今までは財産開示手続きに応じない、もしくは虚偽の回答をした場合、罰則はありましたが30万以下の過料にすぎませんでした。(前科はつきません)
更に財産開示をして財産の差し押さえをされるくらいなら、過料を支払うといった人も多くいました。
これからの法改正ではこの辺りが大きく改正され、6か月以上の懲役または50万以下の罰金という刑事罰に変更されます。
これまでと違い前科がついてしまう為、財産開示手続きを行う人が増えるのではないかと期待されています

(2) 財産開示手続きによる調査権限の強化

養育費差し押さえにかかる財産調査の負担を軽減し、養育費の支払いを実現するために、改正法では以下のような財産の調査権限を強化しました。

①給与債権に関する調査権限
今までは親権者が支払者の勤務先などを把握しておかなければならず、不明な場合は弁護士や専門家に依頼するなど、なかなか調べることが難しかった情報ですが、これからは、裁判所から市町村や年金機構などに対して、債務者の給与債権や賞与再建に関する情報を提供するよう命じる事ができるようになります。

②不動産に関する調査権限
裁判所は債務者の所有名義登記されている不動産について、登記所(法務局など)に対して情報を提供するように命じることが可能となります。

③預貯金口座に関する調査権限
裁判所は銀行等に対し、
債務者の預貯金債権や有価証券に関する情報を提供するように命じる事ができるようになります。

※注意点※
財産開示請求を行えるのは、離婚前に養育費の金額や支払時期が明確に記載された調停調書、審判所、判決書、公正証書(執行文が付されたもの)を債務名義人と取り交わしておく必要がありますので、注意が必要です。

(3)子ども引き渡しの強制執行

これまで子どもの引き渡しについては明確な定めがなく、不動産に関する規定を類推適用するしかありませんでした。新制度適用後は、執行裁判官が執行機関となり、執行官に子の引き渡しの実施を命じます。その後執行官が執行場所に赴き、債務者による子どもの監護を解き、債権者へ引き渡されます。
子どもの利益を最優先とし、今まで罰則の無かった債権者の出頭を実現させます

2.離婚時・財産開示の注意点

離婚をする時は感情的になり、何も取り決めせずに別れてしまう場合もあると思います。
ですが、もし仮に支払いが滞った場合に「財産開示手続き」をスムーズに行える状況にしておかなければなりません。
そのためには、公正証書の作成や、離婚調停等の手続きが必要となります。

行方不明やDV等で協議ができないという状態でなければ、可能な限り、離婚協議をきちんと行い、養育費はもちろんのこと、財産分与や、面会交流、年金分割や、住宅ローン等についてどうしていくのか、きちんと話し合って決定しておく方が良いでしょう。

3.まとめ

これから法改正が行われようと口約束では養育費の支払いが滞ったとしても、義務者に刑事罰などを与えることは出来ません。
離婚を考えられている方は、一度冷静になり、公正証書の作成か調停を申し立て、準備を整えてからにすることをお勧めします。
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子供の将来の為にも養育費の取り決めや差し押さえについての約束などはしっかりと結んでおくことが必要です。
弊社でもそういった悩みも多く寄せられます。
是非何かお困りの際は一度弊所までご相談ください。

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