現在日本のみでなく、世界中に多大な影響を及ぼしている
新型コロナウイルス感染症ですが、既に首都圏内などでは自宅待機を命じられ給与が少なくなってしまった方や、失業者も出ています。
今後もしかすると、皆様の生活にも影響が出るかもしれません。
いざとなった時に困らないよう、今回は失業してしまった際の公的給付金や失業保険、生活保護のご説明と、最悪の場合を考えて債務整理についてご説明させていただきます。

【目次】

1、失業してしまった際に受けられる公的支援金
(1) 失業手当(失業保険金)
(2) 職業訓練校での手当支給
(3) 生活福祉資金貸付制度
(4) 福祉資金
(5) 保険料・税金などの減税、猶予制度
(6) 生活保護受給
2、失業者の債務整理
3、まとめ

1、 失業してしまった際に受けられる公的支援金

急に職を失ってしまった方が路頭に迷い、生活ができなくなってしまわないように用意されている制度がいくつかあります。

(1)失業手当(失業給付金)

「会社都合」の退職の場合、住所地(住民票に記載されている住所)を管轄するハローワークに離職票を持っていき、求職の申し込みを行うと、失業手当(失業給付金)がもらえるようになります。
手当の支給日は、基本手当の受給資格が決定した日(=離職日の翌日)から7日間の待期期間を経たあとからですが、銀行口座に振り込まれるのは、手続き後1カ月後くらいになります。

基本手当は、「労働の意思と能力があるにもかかわらず、求職活動しても職業に就けない状態」にある人に支給されます。今回の様な新型コロナウイルス感染症によるもの等「会社都合」で離職した場合、自己都合退職や定年退職と比較して手厚い給付が受けられる「特定受給資格者」の対象となります。

【失業保険と再雇用の約束について】

この新型コロナウイルス感染症の影響を受け、再雇用を約束し一旦解雇を行う事業所も多くあるようですが、厚労省では自社での再雇用に関して、「再雇用を前提としており従業員に再就職活動の意思がない場合には、(基本手当は)支給されません」としています
(雇用保険法82条2項)
こういった場合で受給した場合には、罰則として不正支給額の返還と返還期限に対しての延滞金納付は当然のことながら、特に悪質な場合は、刑事事件として刑法(詐欺罪)によって処分されることがありますので、ご注意ください。

(2)職業訓練校での手当支給

失業中で雇用保険の受給資格がある人は、職業訓練校に通うことで手当を支給してもらうこともできます。

手当は基本手当の他、技能習得手当として受講手当、通所手当があります。

このうち基本手当は失業保険の基本手当と全く同じ内容です。受講手当は日額500円(月額20,000円まで)、通所手当は訓練校への交通費の支給で月額上限は42,500円です。

しかし新型コロナウイルス感染症対策による対策として緊急事態宣言発動中の公共職業訓練は休止されています。
臨時休校の期間

令和2年4月20日(月)~5月6日(水)(予定)
職業訓練校の休校に伴う手当支給金の代替え措置は今のところ発表されていません。
随時、対応が変動することが予想されますので、詳しくはお住いの市町村へお問合せ下さい。

大阪府HPをご参考ください。

(3)生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は経済的に苦しい人を対象とした公的な貸付制度となっています。
非常に低金利での借入が可能で、
連帯保証人がいれば無利子となり、連帯保証人がいない場合でも年1.5%と低金利での借り入れが可能となります。

【貸付対象】

【貸付の種類】

総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類があり、失業中の人が生活費の借入をする場合は、総合支援資金や福祉資金を申し込むのが一般的です
こちらでも新型コロナウイルス感染症対策を取られています。

詳しくは厚生労働省HPを検索下さい。

(4)福祉資金

この貸付制度は、都道府県社会福祉協議会を実施主体として、県内の市区町村社会福祉協議会が窓口となって実施しており、やむを得ない事情で、どうしても必要なお金の用意ができないときに利用できる制度です。
福祉資金の対象は様々あり、一例をあげると公共料金の支払い、住宅の増築費、冠婚葬祭費用、介護・医療費、職業技能習得費などがありますが、この他にも、要件を満たせば日常生活における緊急の支払いのために借入することができます。

【貸付対象】

【貸付の種類】

貸付資金は、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類です。

この4種類の資金のうち、福祉資金の福祉費は、資金の用途に応じて、貸付上限目安額を設定しています

同じく全国福祉協議会でも新型コロナウイルス感染症対策として
緊急⼩⼝貸付等の特例貸付がとられています。

(5)保険料・税金などの減免、猶予制度

失業で収入が途絶えたときには、保険料や税金の支払いも難しくなるかもしれません。
どうしても支払えないときは、役所の窓口で保険料・税金の減免制度がないか問い合わせをしてみましょう。
自治体によっては、事情により支払い額を減免してくれるケースもあります。減額幅は市町村によって全額~3割減までさまざまです。

なお、所得等基準・減免割合について詳しくは以下の図をご覧ください。
(令和元年3月22日現在)

適用条件も市町村ごとに規定が異なるので、詳細は担当窓口で確認をしましょう。

なお、年金、奨学金なども納付猶予がありますので、ご検討される方は、お問合せ下さい。

 

(6)生活保護受給

生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とする支援制度です。

生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提となっており、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先して行うこととされています。

そのため、原則として、
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充てる必要があります。
・働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください。
・年金や手当など他の公的な制度を受けることができる場合は、先に他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。
親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください。

以上の条件をすべて満たしたうえで、本人の収入と厚生労働省の定める最低生活費を比べ、収入が最低生活費を下回っていた場合に限り、生活保護を受けることができます。

【支給される保護費について】

厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます

仮に、最低生活費が15万円で自分の収入が8万円だとしたら、生活保護費は7万円となります。自分の収入が最低生活費を上回っていたら、受給はできません。

【イメージ】

【生活保護費の内訳について】

生活保護費としては、世帯人数や年齢、地域の等級によって異なります。
妊婦や障害者など状況によっては加算扶助もあるため、一人一人もらえる金額は違ってきますが、概要は以下のようなものになります。

① 「生活扶助」として、日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)が定められた範囲で支給されます。
※「生活扶助」の基準額は、地域・世帯人数・年齢等によって異なります。
② 「住宅扶助」として、アパート等の家賃(各市町村によって定められた範囲で支給、㎡数等の要件があります)が支給されます。
③ 「教育扶助」として、義務教育を受けるために必要な学用品費を定められた範囲で支給されます。
④ 「医療扶助」・「介護扶助」として、さらに、医療・介護サービスの費用や項目にあるようなサービスを利用した場合は、利用した分の費用が直接実費を施設等に支払われます。

その他、+αとして、出産費用、就労に必要な技能の修得等にかかる費用、葬祭費用が定められた範囲内で実費支給されます。
※1
生活保護費 =
①生活扶助 + ②住宅扶助 + ③教育扶助 + ④医療扶助・介護扶助 + その他扶助

(施設等へ直接払い) (定められた範囲の実費支給)
【生活保護費の内の①生活扶助基準額の例】


生活保護の相談・申請窓口は、現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。個々の状況により、生活保護費等も変わってきますので、より具体的な金額・自分が申請できるのか等については、お近くの市町村役場や、専門の行政書士等に個別にお問合せ下さい。

2、 失業者の債務整理

 

上記でご案内させていただいたように公的支援は様々です。
それでも、収入が途絶え、資産も底をつき、借金だけが膨らんでしまった場合には本人にはどうする事も出来ません。

そんな時は債務整理を行い、再起を図ることも手段の1つとなります。
債務整理には任意整理、個人再生、自己破産等があります。
自己破産は借金を全額免除する制度で、手続後は借金返済の必要がなくなります
ただし、税金や損害賠償債権、養育費等一部免除されないもの(非免責債権)もあります。
なお、自己破産手続きは生活保護受給者についても可能な手段です。

一方、任意整理、個人再生は借金を減額する制度で、手続後は3~5年間のうちに借金を全額返済することになるのが一般的です。
債務整理については弊社HPでもご紹介させていただいておりますので、詳細な要件等はそちらをご覧ください。

司法書士法人やなぎ総合法務事務所

または過去ブログ
「新型コロナウイルス感染拡大による支払困難な方・失業者・休業中の方へ」
宜しければ一度ご覧ください。

3、まとめ

 

今回紹介させていただいた内容は仮に皆さまが失業した場合の制度です。
今は関係がなくても実際に新型コロナウイルス感染症の被害により、失業してしまう可能性は皆平等にあります。そういった”もしも”に備えておくことは「備えあれば患いなし」です!
また、実際にお困りの際は弊所へお気軽にご相談ください。

 

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